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清掃業でも人は集まる!求人におけるDXとは何か!?

※この記事は、月刊ビルメンテナンス 415号(2023年1月号)に掲載された内容をもとに、発行元に許可をいただいた上で作成しています。

労働集約型産業において、人手の確保は必須。求人広告を活用した求職活動は常に行われているものの、人が集まらない……。清掃業だから? いやいや、それは求人広告の作りかた、魅せかたに問題あり。これを機会に、求人を1から見直してみよう!

ファシリテーター=(株)ビルポ 稲垣 太一
ゲストスピーカー=(株)ジーエスコンサルティング 代表取締役 河野 ー平

求人のお悩み①

他業種と比べて求人募集が不利だけど、どう解消するの?

【稲垣】ビルポというWebメディア事業を展開している稲垣太ーと申します。当社では、ニュースサイトやインスタグラム、TikToK、Twitter、YouTubeなどを運用しています。スマートビルディングやDX、SDGsといった、何かと話題になるけど、何から取り組んだらいいのかわからない、そういった方たちに向けて、取り組み事例などをさまざまな方法で発信していこうと思っています。
また、コンサルティング業として、設計会社とともに、スマートビルディングに関わる新しいソリューション開発をしています。
今回、ビルメンテナンス会社に向け、「求人のDX」をテーマに、求人募集についての課題解決をしていきたいと考えています。

経営戦略に関わる人手不足問題

求める人と書いて、「求人」です。この求人活動というのは、ビルメンテナンス会社にとって、最も重要な経営戦略の一つです。というのも、人件費は全体の経費の8割~9割を占めるのがビルメンテナンスの業態です。人を集めて、教育をして、それから現場で作業してもらう。非常に大事なものです。
ただ、3つの課題があります。

  1. 最低賃金の上昇
    年間、3%ほど上昇しています。
  2. 2025年問題
    後期高齢者、いわゆる団塊の世代が2025年には75歳の後期高齢者になります。ますます人材不足に拍車がかかります。
  3. 社会保険適用拡大
    ビルメンの世界ではパートさんに支えられています。そのパートタイマー、アルバイトの方の社会保険の加入が義務化されます。2022年10月から段階的になりますが、中小企業も関わってきますので、経営において苦労されることだと思います。

清掃だから人が来ないは幻想

実は、私はもともとビルメンテナンス会社の業務部で求人を担当していました。明日の人がいない状況が本当に、何回もあったし、自分で現場に入ったり、毎週、毎週、求人をかけても人がこない状態が続いていました。
ここまでくると、思考が停止している状態です。現場の人たちに「求人どうなってますか」と言われたときに、「出しているんだけど、来ないんだよね」という言い訳をするために求人を出しているような、そんな状態でした。
本当に、求人に向き合っているのか。本当に、人が来るための努力をしているのか。そういったことを考え、試行錯誤して、人が来るような現場づくりをやってきました。
皆さんのなかにも、清掃だから来ない、ネット求人だと来ない、そう考えている人が、けっこういると思います。
求職者というのは、求人広告を調べる際に、まず「エリア」を見ます。次に、「時間帯」を見ます。ここまでは、その人の生活の一部に関わる情報ですよね。もちろん、「条件」も見ます。
最後に何を見るかというと、「自分にできそうかな」というところです。考えてほしいのが、皆さんが転職先を探しているときに、ものすごく条件が良くても、いまからプログラミングの仕事に就こうとは思いませんよね?
清掃業だから人が来ないのではありません。条件やいろいろな仕掛け、戦略によって人の来る来ないが決まるんです。
求人広告に、毎月のように、何百、何千万と垂れ流しているところもあります。会社経営するなかで非常に厳しいですし、もっと効率のいいやり方があります。清掃業でも人は集まる。その可能性の探求を、ジーエスコンサルティングの河野一平さんにお話しいただきましょう。

求人のお悩み②

Web求人は清掃業でも最適なの?

求職者から選ばれる企業とは?

【河野】当社は、中小企業の採用支援を行っております。お客様企業の「採用部署」として採用活動を包括的に見直し、外注先の人事担当のようなサービスを展開しております。
創業はまだ4期目ですが、累計800社を超える企業の採用の支援を経験しています。
やはり、コロナで困っている会社が多く、無料相談会というかたちでたくさんの人事部の方とお話をする機会があります。
現在は、売り手市場、つまり求人広告がたくさんあって、Indeed(以下、インディード)で閲東エリアを検索すると、10,000件以上ヒットします。このなかから選んでもらわないといけないのですが、意外と求職者の立場で自社の原稿を見たことがない人がすごく多い。
いまの求人広告の主戦場は、Webですが、楽天やAmazonで買い物するのと同じように、求職者は簡単に求人広告の比較ができてしまいます。給料が高いとか、人気があるとか、その比較のなかから決めていきます。私どもが支援する企業には、そこで働く従業員に対して、「自社が選ばれる理由を3つお答えください」と聞いて、魅力づけをしています。働く人に選ばれる中小企業を増やしたい。それがわれわれの使命です。

ターゲットに刺さる求人広告

稲垣さんとは、当時、名古屋のビルメンテナンス会社の採用支援で知り合いました。現在は、会社を創業されたので一緒にビルメン業界の採用を支援するサービスをスタートしています。
求人広告では、誰がターゲットなのか、それに応じて「なぜわが社を選ぶのか」という理由を考えていきます。つまり、その人に提供する商品は何か。時給を上げておけばいいという問題ではありません。福利厚生や条件などが起因します。現時点で働いている従業員を調査し、ワーカー目線で求人広告を作る。
若い人がほしいなら、DX化が進み、作業が変わるなかで、作業者が行う業務も変わります。ビルメン業界は給料が安いからいいイメージがない。でも、誰にリテラシーがあるのか。ターゲットの目的は何か。その人に提供する条件は何かまで考え
ないと新卒採用は難しいでしょう。この仕事が将来どうなるのか、どんな社会貢献につながるのか、そういったメッセージを込めることも必要となります。
近年では、ビジョンマッチ採用をしないと若い子が来なくなっています。
例えば、友人とか両親から仕事のことを聞かれて、「掃除の仕事」というのは言いづらい。それなら、「ビルクリーニングを通じて働きやすい環境をつくる会社です」というキャッチコピーを作って、求人広告に掲載する。当然、ほしいターゲット層に対して画像もキャッチコピーも全部変えます。当社では、動画の制作も行っています。

営業と求人は似ている?

当社は、インディードの正規代理店なのですが、なぜ、インディードなのかというと、毎日、何人閲覧して、何が起きているのかを数字で見ることができるからです。当然ですが、今後、求職者の数は減ります。そうなると応募単価は上がります。
なので、とにかく応募を集める。それで連絡の有無はどうなのか、面接の実施状況はどうなのか、採用は何%なのか。営業の管理のように、応募状況をKPIで管理していかないといけない。
事実、たった10%の改善で採用コストが半分になった、応募数が増えたという例はたくさんあります。求職者はお客様です。そのときにどんな対応をしたのかーー。ちなみに、当社では15分以内に一次対応をしています。創業以来ずっと、土日祝日も。コールセンターを活用しながら、この会社で働きたいと思える会社づくりを実践する、そういった想いで活動をしています。

求人のお悩み③

DXが進むとビルメンの仕事はどうなるの?

【稲垣】これまでの求人の感覚とは違うことがわかりましたか? ただ、応募がいっぱいくるようになると、それはそれで大変なんですね。面接の比重が大きくなるからです。
ただ、お金をかけてたくさんの応募者を集めるだけでは意味がありません。きちんとマッチングする。むやみやたらに集めたらいいというものではなくて、点と点を作って線にして、面にする。こういう動きを各会社がやるべきではないかと思います。
また、私自身の目標としては、現場の人により多くの給料を払いたい。洗車を思い浮かべてほしいのですが、機械でやると安いのに、人でやると高い。この状態をビルメンテナンスの世界でもつくりたい。
なので、DXを進める。センサーとロボットを活用することで業務の9割を自動化することができます。あとはそれを組み合わせてソリューション提供していく。
当然、「えっ、ビルメンの敵じゃん!?」と言われることもあります。そうではありません。DXというのは、人が行う作業の付加価値が高められます。人でやるサービスとは何なのか。それは、ホスピタリティとかのサービスです。お客さんが施設管理にお金をかけられないというのなら、安いロボットを使って作業すればいい。なので、そういったサービスの差別化をするためにDXを進めています。

(株)ジーエスコンサルティング 河野 一平
22歳から物流会社の創業にたずさわる。物流のあらゆる仕事とそこで働く人たちと関わり続け、その経験から、「お客様の人事部となる」というコンセプトのもと、採用支援を担う。

(株)ビルポ 稲垣 太一
大手ビルメンテンス会社に勤務し、Webで営業、求人を行う。現在は、「ビルメンテナンス業界の未来を共に創ります」を理念に掲げたポータルサービス「ピルポ」を立ち上げる。

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